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月曜。
ある所に暮らす青年は、「死にたい・・・」と病んでいた。
死にたい理由は、雨が降っているからだ。
死にたい理由等は千差万別なので、何ら不思議では無い。
だが、雨は気付いたら止んでいた。気付いたら病んでる彼の心も晴れていた。
また雨が降ったら彼の心も病むだろうが、雨が止んだら彼の心も晴れるだろう。
彼はその繰り返しをこれからも生きて行くのだ。
だが、この青年はこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らす少女は、「死にたい・・・」と悔やんでいた。
一ヶ月も前から楽しみにしてた、人気デュオKinKiKids(キンキキッズ)30枚目のニューシングル、Family~ひとつになること(作詞:堂本剛。作曲:堂本光一)が期待外れだったのだ。
だが次の月曜もそれを聴き、その次の月曜もそれを聴いたら、一転して期待通りの出来栄えだと感じ取った。
つまりこの曲は、聴けば聴くほど味が出る曲だったのだ。
なので少女はもう死にたい気持ちは失せていた。
Family~ひとつになることの奥深さが理解出来た以上は、死ぬ理由なんて無いのだから。
だが、この少女はこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らす主婦は、「死にたい・・・」と悲しんでいた。
ハンバーグを作ろうとタマネギを刻んでいた。泣いていた。
だから死にたいと思っていた。
だが暫くしたら涙は止まったので死にたいとは思わなくなった。
しかし涙の本当の理由は今日「乳癌」だと告知されたからだった。
「お母さん、なんで泣いてるの?」と娘が心配して聞いて来るが、
「さっ、さっきタマネギ切ったからよ」と優しく返す母親。
だが、この主婦はこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らすひきこもりは、「死にたい・・・」と苛立っていた。
理由は、幼馴染の美少女、藤崎詩織に放課後一緒に帰宅しようと持ち掛けたのだが、
「一緒に帰って、友達に噂されると恥ずかしいし・・・」と拒否されてしまったからだ。
恋愛シミュレーションゲームの金字塔、ときめきメモリアルでの話だが。
好感度を上げて再び誘ったら一緒に帰ってくれたので、死にたい気持ちは失せていた。
だが、このひきこもりはこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らす老人は「死にたい・・・」と日々思っていた。
理由は、寝たきりだったからだ。
哀れな事に、この老人から「死にたい」って気持ちが消滅する事は無かった。
寝たきり老人が死んでも困るのは、色んな意味で悲しむのは、介護職に就いてる人だけであるのは確かな事実だ。
だが、この老人はこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らす陽気な黒人トムは「シニタイ・・・」と吠えていた。
理由は、肌が黒いからだ。つまり気持ち悪い、薄汚いからだ。
だがそんな時、五体不満足の乙武洋匡を偶然目撃した。
「ヨッシャ! アイツヨリハマシだ!!」と死にたい気持ちが失せたトム。
乙武洋匡は流石であった。
色んな人に「アイツよりはマシだ」と見下して貰って、存在自体で勇気を与えてるのだから。
だが、この黒人はこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らす日本一面白いブログ、『愛する人への恋文(
http://20yearsafterlove.blog.2nt.com/)』の主(山下智久似)は「死にたい・・・」と落ち込んでいた。
理由は、ブログでつまんない記事を作ってしまったからだ。
尤も、高打率打者でも打てない時はあるのだから落ち込む必要なんて皆無なのだが。
右(ヤフーブログ)を見ても左(アメーバブログ)を見ても、
自分のブログよりつまんないブログだらけなので、
「こいつらよりはマシだ!!」と見下し優越感に浸る方法もあるが、彼は人間だったので無理だった。
「まあ次面白い記事作ればいいか」と悟り、死にたい気持ちは失せていた。
だが、この山下智久似の天才ブロガーはこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らすゲーマーは、ドラクエ最高傑作の『ドラゴンクエストⅢそして伝説へ…』をプレイしていた。
商人の名前は「しにたい」だった。
そして商人の町に着いた時、「しにたい」は勇者パーティから失せた。
だが、商人の名前はこの物語とは無関係だった。
ある所に暮らす田中はなんとなく、「死にたい・・・」と思っていた。
だがなんとなく「死にたくない」と思ったので死にたい気持ちは失せた。
流石は田中であった。
人生の真理である霊性の境地に到達している。
だが、田中はこの物語とは無関係だった。
ある所では、手形不渡りが原因で中小企業の社長が自殺した。
ある所では、虐めを苦に少年が自殺した。
だが、この二人もこの物語とは一切関係なかった。
地球という名の壮大な物語の中では、全登場人物が無関係だったのだ。