1月の第二月曜、成人の日。
熊本県熊本市、ここに住む水嶋ヒロ似だが今ひとつパッとしない青年は、
彼女、女優の北乃きいが本日成人式に出席し、その報告メールを、KinKiKids(キンキキッズ)30枚目のニューシングルにして最高傑作の、Family~ひとつになること(作詞:堂本剛。作曲:堂本光一)を聴きながら嬉しそうに見ている。
ちなみに北乃きいは3月15日生まれで、現在19歳だ。
報道陣からの「結婚は考えていますか?」という質問には、
熊本の愛しの彼に宛て「料理を勉強しています。まあ私なんかの料理を食べてくれる人は優しい人だと思いますが・・・。ロールキャベツは作れるようになりましたっ!」と、公共の電波を借りラヴコールを送った。
そしてつけっぱなしのテレビからは、熊本を中心として月曜から金曜の夕方に放送されてる情報ローカル番組『テレビタミン』で、
「本日熊本でも成人式が行われ、特にトラブルはなく無事終了しました」と報道されていた。
「ちっ、つまんねえな。トラブル起きろよ」と心の中で不満を感じる水嶋ヒロ似の青年と、
その報道を見ていた全視聴者。
だが、この青年と北乃きいはこの物語とは無関係だった。
舞台は数時間前。とある地域。
「最近は若者のモラルの低下が著しい・・・。まったく」
ある成人式会場の外で、一人の初老男性が嬉しそうに嘆いてた。
毎年この時期になると、普段家族等から虫けら扱いされてる自分たちでも暴れてる新成人者達を高みの見物し、最近の若い者たちよりはマシだと思い込んでいる。
老人達にとっては一年の中で唯一存在意義が確認出来る日でもあるのだ。
しかし、成人式は無事に終了してしまったようだ。新成人たちは品行方正であった。
「なにぃ!?」幼女から、あさぎはブス!!と言われた美人、あさぎばりに驚く老人。
「おい、きさま」辟易し、無造作に新成人の若者達を呼び止めるジジイ。
「なっ、なんですか?」恐る恐る尋ねる新成人。
「暴れろ」
「えっ?」
「暴れんかいこらあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!! 無事に終了したらワシもマスコミも大衆も、楽しめなくて困るだろうがっ!!!」
と、刃物と正論を振りかざし暴れまわる老害。
「ひいぃぃぃいいぃぃぃっっっ!!」成人式会場が、血の渦に巻き込まれた。
数時間後。牢屋の中で、ジジイが呟く。
「まったく・・・。最近の若い者は・・・、」
どうやら、それが言いたかっただけらしい。