「ああ暇だ」
ジャニーズばりの美男子だがいまいち冴えない俺は街中でそう呟いてた。
「きみきみ」
みのもんたみたいなタモリみたいな菅原文太みたいな奴が話し掛けてきた。
「なんだてめえ!? ジャニーズのスカウトか? 意表をついておニャン子クラブの手先か?」
「そうじゃないんだ、いいバイトがあるんだけど、する?」
「とりあえず言ってみろ、話半分で聞くけど」
「ずっこーん!! 話半分かよ!! まあいいや、実は・・・これを見てくれ」
そう言って富野由悠季みたいな奴が薄型テレビを一台差し出して来た。
「なんだこれは?」
「このテレビを24時間見張ってくれないか? 10万円出す」
「マジかぁ? 天下りばりに美味しい仕事じゃないか。引き受けた」
「では頼んだぞ」
単発とはいえ日給10万円、実に美味し過ぎるので俺は二つ返事で引き受け、
こうして俺とテレビの奇妙な共同生活が始まった。
テレビは黙って俺の話を聞いてくれる。俺の話に耳を傾けてくれる。なんて良い奴なんだ。
俺の事なんて誰一人気にしてくれなかったのに、耳を傾けてくれなかったのに。
俺は仕事上での関係を超えて、こいつに恋愛感情を抱いてしまった。
だが無情にも時間は過ぎて行き、約束の時間が訪れる。
「ご苦労だったな、テレビを引き取りに来た」
「まっ、待て・・・待ってくれ! 俺は、俺は・・・そのテレビを・・・」
「?」
「愛している!!」
「!?」
「大罪人だ、であえ!!」
兵隊が数人数十人数百人とジャイアンが部屋に駆け込んで来る。囲まれる俺。
「かごめかごめ♪ じゃないぞ!」と威嚇するみのもんたみたいな奴。
実はこの世界では善悪が逆転しており、
平等、自由、正義、友情、弱者、人権、愛、が七つの大罪とされているんだ。
異端審問官の前で七つの大罪の中で最も重いとされる『愛』を口にしてしまった俺は、
ただではすまないだろうと思われる。だがこれでいいんだ。
愛を口に出来ない世の中なんて間違っているのだから・・・。
そして異端審問官は静かに口を開く。
「ならその勇気に免じてテレビを譲ってあげてもいいが」
「本当ですか???」思いもよらない申し出に歓喜する俺。
「ただしそのテレビは特製だ。3000万円頂くが」
「さ、3000万円ですって・・・!?」
「ええ。アナタに払えますかな?」
「えっ、ええ払えますとも! たとえ一生かかっても・・・どんな事をしても払いますともっ!
きっと払いますとも!! 絶対に払いますとも!!」
「ふっ・・・その言葉が聞きたかった」
愛では地球を救えないかも知れないが、
俺はただ、目の前の愛する奴を救いたかったんだ・・・。
きっとそれからなんだよ・・・、地球を救うのは。