「おい! 凄い事思いついた!!」俺はそう叫びながら嬉々として親友の部屋に入り込む。
「どうした?」相変わらず素っ気無い奴だ、コイツは昔からこうだった。
「まぁ見てくれよ、俺の顔を」
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「?」真意が察せずキョトンとしている親友。
「ヒゲ、生えてるだろ?」俺は得意気にそう言う。
「ああ。生えてるな」
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「そこでこれだよ!」俺は万年の笑みで白い奴を取り出し部屋に設置されてる手洗い場に置く。
「うん?」
「いいか? よーく見とけよ。手洗い場借りるぜ」
俺は剃りたい部分の皮膚を温め、充分柔らかくした。そしてジョリジョリと剃り始めた。
髭剃りが出来る人に悪い人はいないという、陽気な外国人トムの格言は本当だったようだ。
「ふふふ」思わず口に出してニヤケル俺。親友は無反応だ。
そして数十分後「さあ、見ろ!!!!」と自信ありげに顔をグイっと親友の視界に近付ける。
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「見ろよ! さっきまで一杯あったヒゲがなくなってるんだぜ!? 凄いだろ!?」
「ん? ああ、そうだな」やはり素っ気無い親友。
「・・・」
「・・・」
「で、つまりどういう事だ?」流石にこの気まずい沈黙に耐え切れなかったのか親友が聞いて来る。
「パンが無いなら、ケーキを食べればいい・・・!」俺はそう豪語する。
「マリー・アントワネットやね」
「女子中学生とエッチして捕まるのが怖いなら、成人してる彼女に制服着させればいい・・・!!」
「ブッダ様ばりの真理やね」
「この世に悪があるとすれば、それは人の心だ・・・!!!」
「エドワード・D・モリスンやね」
やはり定年退職した夫婦のように冷め切ってる親友は、面倒臭そうに相槌しか打ってくれない。
「で、つまりどういうことなんだ?」眠そうに尋ねて来る親友。
「あのな、つまりな。ヒゲは伸びても剃ればなくなる、人生は何時でもやり直せるって事だ」
「ちょっと待て、つまり、ヒゲは剃ればなくなるし、人生は何時でもやり直せるって事か?」
「そうなんだよ! ヒゲは剃ればなくなるし、人生は何時でもやり直せるって事だ。わかってくれたか!?」
「なるほど、ヒゲは剃ればなくなるし、人生は何時でもやり直せるって事か。深いな、納得した」
「・・・」
「・・・」
今度の沈黙は、俺がこの部屋から出て行くまで続いた。