●愛する人への恋文

熊本県熊本市、繁華街。
25歳でイケメンで偉大な俺は今日もこの街の治安のため見回りをしていた。
街の人達はみんな俺の姿を見て「いつもご苦労様です」と神様を見る目で崇める。
やれやれ、普通に人として接して欲しいんだが・・・。

するとなんと、可愛い女子中学生が不良数人に絡まれているではないか！？

「やめろ！」
「なんだてめぇ！？」ベキベキ。必殺のマッハパンチであっさりと不良の部下を全員倒す俺。
「ほぅ、やるじゃねえか」不良の大将が現れ、俺に迫る！流石に雑魚とは違う！！
さっき倒した奴等がスライムなら、コイツはアームライオンだ！！

「どうする？　降参するか？」そう言って来る不良の大将。
「誰がするかよ・・・！！」瀕死になりながらそう答える俺。
「大体なんで俺達があの女子中学生に絡んだのかわかってるのか！？
　声優になるとかバカな事言ってるからだよ、笑えるだろ？」 と嘲笑う不良の大将。
「・・・」相手には聞き取れない声で呟く俺。
「何言ってんだてめえ？」
「もうやめてください！！　勝てませんよ！！」住人たちが止めに入る。
「男には、どうしても戦いを避けちゃならねえ時がある・・・。
　勝てないとわかってる相手にも挑まなきゃいけない時がある・・・。
　それは・・・それは・・・仲間の夢を、笑われた時だっ！！」ボロボロになりながら、そう豪語する俺。
「へっ、最近のヤクザはすぐにヤッパ(刃物)だのチャカ(拳銃)だの使うが、やっぱ喧嘩の本質は素手ゴロよ」
そう言いながら街を取り仕切っているヤクザの親玉が現れた。
「親父！？」驚愕する不良の大将。
「お前の負けだよ。そうだろ？」
「うん。勝てないよね・・・こいつの思いには！　俺、旅に出るよ」
「ふっ。とっとと行きやがれ」やっと男の顔つきになった息子を気持ちよく送り出す親父。
「うん」サルとキジと犬とアフロ田中と共に旅に出た不良の大将。
そしてヤクザの親玉は俺に手を差し出す。
「けっ、てめえら薄汚い奴の手を取るほど俺は落ちぶれちゃいねえよ！」
そう言って振り解き、女子中学生に肩を貸す俺。
「言うねえ兄さん。名前はなんて言うんだい？」
「姓は武藤、名は国光。腐ったニッポンを変える男よ！！」俺はそう豪語する。
「へっ、楽しみにしてるぜ」そう言い残し、立ち去るヤクザの親玉。

「お前、大丈夫か？」
「はっ、はっ、はっはい。なんとお礼を言ったらいいのか。せめてお名前を・・・？」
赤面しながら尋ねて来る女子中学生。
「いや、聞けよ、さっきの熱いくだり。だから、ニッポンを変える男・・・」
「・・・」
沈黙する女子中学生。俯いて、ノートをカバンから取り出すなにやら書いている。
それを破り俺に「ど、どうぞ！」と渡し、慌てて立ち去った。

「なんだこれ？」と確認すると、携帯のメールアドレスが書いていた。
メルアドの後には「私は余命二日です、明後日病気で死にます。最後の思い出に、デートしてください！」
と書かれていた。
「・・・」しかしその日は、仲間と野球をする約束があった。
俺はコンビニに走る。アイスが入ってる冷凍庫を開けて顔を突っ込む。
すると、コンビニ店員が止めに入った。
「やめろ！　気持ちは痛い程わかるけどやめるんだ。
　風邪を引けば野球しなくて済むから・・・だろ？　後悔するなよ、素直に謝って彼女の所へ行けよ」
と後押しされ感動し、俺は素直にそうする事にした。

そして当日。約束の時間の10分前には約束の場所についたのだが、既に女子中学生の彼女がいた。

「やっ、やあ」
「ど、どうも」
「・・・」
「・・・」

気まずい沈黙が続く。俺が年上なんだからリードしてやらねばと思い口を開く。

「あっあっ、あの・・・俺・・・」
すると彼女の様子が変わった。おや、かのじょのようすが・・・。
一応Bボタン押してみたが駄目だった。

「ははは、バカめ・・・鼻の下のばして騙されおって！　
　我はダークキングダム四天王の一番手ジェダイトだ！ 貴様の命、貰い受ける！！」
と隠していた鋼の剣を取り出す。
「ちい！」童貞卒業出来ると期待したのに裏切られた俺は怒り狂い、必殺パンチを食らわそうとした。
しかし・・・。ベキっ！俺のパンチの先には、別の人が。
誰がこんな奴を庇ったんだと思うとその正体は・・・、
なんと、坂上竜馬先生だった。元政治家で、今度の市長選では有力とされている候補だ。
俺は今この人の家に住み込ませて貰い秘書をしており日々政治の勉強をしている。

「ダメだよ・・・。殴ったら、政治じゃないよ。
　国民に殴り合いをさせないために、僕たちがいるんだから」と断言する坂上先生。
俺はレンタルビデオを返却するのを忘れてて、延滞料金を払うはめになった時ばりにショックで感動した。

「ぐすん・・・」と感動しているジェダイト。
更に「私も、秘書になってもいいですか？　お手伝いさせてください」と申し出て来る。
「もちろんだよ」と快く承諾する坂上先生。
その様子を遠くから見物していた四天王の残りの三人も感動して、仲間にしてくれとやって来た。

「坂上先生・・・。やはり凄い人だ・・・。
　この人の弟子になって本当によかった・・・。
　だが俺たちの戦いは始まったばかりだ」

愛しのパイ・・・。待っててくれ。
いつか必ず君を人間にしてあげるから。かならず・・・。