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「出てない出てない!!」二人でのテニスの最中、明らかにアウトボールなのに、出てないと言い張る姑息なプレイヤーがいた。遠目には性別が男とも女とも判断出来ない風貌で、年齢も同様だった。
「いやあの、出てますよね?」恐る恐る指摘する真面目そうな相手のプレイヤー。
「あなたねー。セルフジャッジの意味わかりますか? 私が出てないって言ったら出てないんですよ。私が見てないって言ったら見てないんですよ。私が楽しんでないって言ったら楽しんでないんですよ!!」
物凄い勢いでまくし立てる姑息なプレイヤー。
「まあその通りかも知れませんけど、自分で情けないとは思わないんですか?」無謀にも韓国人の悪質プレイヤー相手に日本語で諭す良識プレイヤー。
「はぁ? 全てはセルフジャッジ、つまり自己で判定を下せるんですよ? わかりますか?」
「はい」
「だから、私が出てないって言ったらたとえ出てても、出てない事になるんです!!
私が楽しんでないって言ったら、たとえ楽しんでても、楽しんでない事になるんです!!」強く豪語する。
「いやあの、明らかにブログとか楽しんでますよね?」サラっと図星をつく。核心を突く。夜は女の穴に突く。
「楽しんでない楽しんでない!!」4月1日でも無いのに、平気ですぐにバレる嘘をつく。
「ブログとか、見てますよね? バレバレですよ?」見てる事バレるのが何より恥らしいので黙っといてやったが、優しさに甘え過ぎだったので若干切れていた。
「見てない見てない!!」もしもキノピオだったら、鼻が物凄い事になっているであろう。
「黒人は気持ち悪いですよね?」
「気持ち悪くない気持ち悪くない!!」嘘発見器を使うまでも無く誰でも嘘だと言う事はわかるであろう。
「乙武洋匡は気持ち悪いですよね?」
「気持ち悪くない気持ち悪くない」ちなみにこの姑息プレイヤーは狼少年では無いとだけは言っておく。
「死ね」ドシュドシュ。
「うぎゃあああ。いや待て、痛くない痛くない!!」唯一の特技の嘘をつく。
「まじかよ」ドシュドシュ。
「うぎゃああああああ。見てない見てない見てない見てない見てない。天才が凡人を楽しませるのは当たり前、自分程度雑魚ゴミじゃコメントすらも出来ないんだから見て見ぬフリするしかないだろ」死んだ。
「地獄からセルフジャッジ出来るのか?」と問い掛けたが、返事が無い、ただの屍のようだ。
死んでも誰一人として悲しまないのも、そもそも死んだ事さえ認知されないのも、セルフジャッジなのだろうか・・・。
そこに、しかばね老人クラブの田中さんが偶然通りかかった。
「どうしました?」
「生きる価値の無いゴミが死んだんです」
「なるほど」
セルフジャッジ云々の問題以前に、納得せざるを得なかった。