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「おい親友、TSUTAYA熊本御領店で、旧作レンタル100円やってるぜ」俺は親友が暮らす小奇麗なアパートの一室に入る早々、そう告げた。
「そうか」
「行って来るぜ? 一週間レンタル出来て100円だぜ? 新作なんて一泊二日で350円もかかるんだぜ? バカだろ、このタイミングで新作借りる奴って」と言い残し、俺はその場を後にした。
「わざわざそんな事報告しに来たのか、寂しい奴・・・暇な奴。所で、熊本のツタヤって正式名称はTSUTAYA、AVCLUBだったよな? 考えてみたらすげえ名前だな。アダルトビデオ倶楽部って」親友のその虚しい呟きが俺に聞こえる事は無かった。
親友の部屋から出て数分後、俺は目的地に辿り着く。
その奥地に存在する、選ばれた者しか入る事が出来ない聖域へと何の臆面も無く足を踏み入れる俺。
選ばれた者も何も、俺みたいに無駄に年齢を重ねた者なら入れるし、度胸のある小中学生でも入れるのだが、そこら辺は突っ込まないで頂きたい。誰と話してるんだ俺は。
「さてさて。旧作旧作。一本100円かー。うしし」
ドヤ顔で入ると、目前に存在する新作コーナーが俺の視界に入った。
「ん?」
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・・・新作。『100%リアルガチ軟派VOL.26 in 熊本』。キター!熊本編たい。新作。・・・。
「・・・」
その数分後、俺の姿はレジの前にあった。
「ではこちら、新作レンタル一本の一泊二日ですので、350円になります」
「いっ、いやー・・・。弟が就職したもので、そのお祝いでして。ははは」
「そうなんですかぁ」
俺はこの日、阿附迎合という四字熟語の意味を生まれて初めて理解出来たのだった。