●愛する人への恋文

俺は帰宅途中、ゆめタウンサンピアン1Fトイザらス熊本店入り口で不意に張り紙が目についた。

「　モンスターハンターポータブル3rd(ソフト単品) 完売いたしました。なお、次回の入荷は未定となっております　」

と。

「・・・」しばしの思案の後、店内に入り店員に声をかける俺。
「あの、すいません。モンスターハンターポータブル3rdください」俺は自分でも意味不明な発言をした。
だが、誰かが生きているまま最後の時へと向かわなきゃ、地球の色を誰かが哀で歌うなら僕は愛を歌わなきゃいけないのだから。
「申し訳ございません。売り切れです。なお、次回の入荷は未定となっております」
予想通りの定型的な答えが返って来た。

続いて、本屋に向かい店員に「月刊少年マガジンください」と声をかける。
「はい、こちらですね？　440円になります」と、何故かレジの奥に置いてあった月刊少年マガジンを持って来てくれる。
「あっ、はい。売り切れじゃないんですか？」と言いながら500円硬貨を差し出す俺。
「大丈夫ですよ。では500円からお預かりします」テキパキと会計処理をする店員さん。
俺は早速外のベンチコーナーで袋から出して読んでみる。
「バスケ漫画の金字塔、ディアボーイズは本当面白いなあ。にしても、成田中央ともう二年ぐらい試合やってないか？　今世紀中には天童寺と戦えるんだろうな、おい。にしても石井がここまで成長するなんて・・・。ある意味、児島も大成長か」何故か独り言で感想を述べながら、読み終える俺。

続いて、腹ごしらえにマクドナルドへと向かう俺。
恥ずかしがらない、恥ずかしがる必要は無い。嘘を駆け抜けて、
「すいません、ハッピーセットください。店内で」となんの臆面も無く注文を叫ぶ。
「はっ、はい。今ですと、シュガースタンプ、マイメロディスタンプ、パパシュレックフィギィア、長靴をはいた猫フィギィア、の4つの中から1つ玩具が選べますが」
店員さんは一瞬戸惑ったが淡々と事務的に説明する。
「売り切れじゃないんですか？」と尋ねるが、0円のスマイルで「はい大丈夫ですよ」と即答して来る。
「じゃあ、パパのフィギィアで！！　飲み物はコーラでお願いします」
と元気よくお願いする俺。
「はい。少々お待ちください」とまずはコーラと番号札を渡してくれて、後のハンバーガーとポテトと玩具は席まで持って来てくれるらしい。
数十分後、間食した俺は非常に満足し、店を後にした。
これで玩具までついて380円(クーポン使用)は破格だ。ありがとう、マクドナルド。
マクドナルドがあるから、怖がらず恥ずかしくも無く失わずひとつを生きて来れたんだ。

そして、CDショップに向かい店員さんに、
「キンキキッズの30枚目のシングル、Family～ひとつになること、ください」とお願いする。
「はい。初回盤と通常盤がございますが」
「売り切れじゃないんですか？？？」不満そうに尋ねる俺。
「大丈夫ですよ。初回盤、通常盤、共にございます」
「堂本剛作詞、堂本光一作曲で一年ぶりのリリースなのに、売り切れじゃないんですか？？？」
「大丈夫ですよ。初回盤、通常盤、共にございます」
買わないで出るのは気まずいので止むを得ずどっちかを購入し、そそくさと店を出る俺。
「なんでこんなクソ歌買わなきゃいけねえんだ、畜生。所詮ジャニーズ、アイドルの歌だろ。ジャケットもなんだよこれ気持ち悪い。男同士で寄り添ってるんじゃねえよ堂ホモが。最近宗教にハマッて愛に傾倒してるらしいけど、愛じゃなくてゲイだろうがゲイドルどもが」
しかし俺は後にこの歌で人生を変えられる程に感銘を受ける事になるのだが、それはまた別の話であった。

「何故、あれもこれも売り切れじゃないんだ。モンスターハンターが売り切れなのに・・・」
と、腑に落ちないまま今度はソープランドに赴く俺。
「えみちゃん指名で」入る早々ボーイに指名無料券を差し出し、速決だった。
「はい。コースは？」
「あっ、60分コースで。売り切れじゃないんですか？」
「売り切れ？　大丈夫ですよ。指名できますよ、えみちゃん」
「そうですか・・・」
余談だが、俺の元彼女とピカチュウの名前が『えみ』だった。

そして約60分後、『風来のシレンフェイの最終問題』をクリアーした時ばりのどや顔で店から出て来た俺は、再びゆめタウンサンピアン1Fトイザらス熊本店に向かった。
例の張り紙を横目に店内に入る俺。閉店直前だったので露骨にBGM『蛍の光』が流れていた。

「あの、すいません。モンスターハンターポータブル3rdください」と店員さんに告げた。
「申し訳ございません。売り切れです。なお、次回の入荷は未定となっております」
「なんで売り切れなんだよ！？　えみちゃんですら売り切れてないのにおかしいだろ！！」
「はい？」