熊本県熊本市、ここに住む青年はKinKiKids(キンキキッズ)30枚目のニューシングルにして最高傑作、
Family~ひとつになること(作詞:堂本剛)を作曲した堂本光一ばりのイケメンだったのだが、
二回前の夏季オリンピックの時期から今日まで自室にひきこもっている、所謂ヒッキーだった。
いつも必要なものの買い物はドアの下の隙間に紙を置き、母親に頼んでいるのだが、この日、彼は居間で逆上していた。彼が部屋から出るのも筆跡を通さず唯一の親と直接対話するのも久しぶりなのだが、その理由が逆上だというのも、なんとも皮肉な話ではある。
「おい・・・これ、『クロレラマドル』じゃねえか! 偽物だぞ!!」
65mlの乳酸菌飲料が入っているプラボトル容器を突きつける青年。
青年は乳酸菌飲料の金字塔『ヤクルト』を頼んだのだが、贋作の乳酸菌飲料『クロレラ』が部屋の前に置いてあったのだ。憤慨の理由はそれだった。
「えっ、ごめんなさい・・・。似てたから・・・」ただただ戸惑う母親。
「味が全く違うんだよ! ヤクルトが国産牛ならこんなの外国産牛だろうが!!」
一億万人中一億万人が、事前情報無しに国産牛と外国産牛の食べ比べをしたら、どっちが美味しいのかは当然判別出来ないのだが、それとこれとは無関係だった。
「ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・」低い抑揚で俯き、謝罪の言葉を繰り返す母親。
「けっ・・・。ボケがっ・・・」と言い残し、部屋に戻る青年。
自身のブログで怒りを発露する事にした。
●記事名:クロレラwwww
ババアに「ヤクルト買って来い」って言ったら偽物(安物)のクロレラ買って来たwww
マジふざけてるわこのボケババア。
ガンダムのプラモデルとガンガルのプラモデル間違えるぐらいの失態じゃねえか。
ポケットモンスターと間違えて、パクリのデジタルモンスター買うようなもんだよなw
幽遊白書(著:冨樫義博)と間違えて烈火の炎(著:安西信行)、ONEPIECE(著:尾田栄一郎)と間違えて、RAVE(著:真島ヒロ)、バカとテストと召喚獣(著:井上堅二)と間違えて、俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長(著:哀川譲)・・・。は、まあ仕方ないけどなw
マジババア殺す。ムカツク。殺す。ムカツク。殺す。ムカツク。殺す。
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それを見ていた読者達は、いたたまれない気持ちになってしまった。
後日・・・。彼のブログには珍しく、コメントが殺到した。
1:ヤクルトがクロレラのパクリなんだぞ?
2:ヤクルトがクロレラのパクリなんですけどぇ?
3:ヤクルトがクロレラのパクリでごわす
4:ヤクルトがクロレラのパクリだっちゃ
5:ヤクルトがクロレラのパクリです、本当にありがとうございました
6:ヤクルトがクロレラのパクリでし
7:ヤクルトがクロレラのパクリなりぃぃぃぃ
8:IsYakultcribofthechlorella?
9:ヤクルトがクロレラのパクリだぜ?
10:ヤ ク ル ト が ク ロ レ ラ の パ ク リ
と。
「そうだったのか!?」ネットしか情報源がないので、疑わず疑いもせずに驚く青年。
「母さん、ごめん・・・」居間に行き謝罪しようとすると、首吊り自殺していた。
「母さん!?」遺書には、
「 ヤクルト買うお金が無いんです。ごめんね、ごめんね・・・ 」と書かれていた。
やはりヤクルトは乳酸菌飲料の王者なので値段も高めなのだが、クロレラは不味い・・・味が落ちるので、ヤクルトと比べるとかなり安いのだ。
「!?」その文面を見て、驚愕する青年。
「うう・・・。母さん、ごめんよ。母さん・・・」涙ながらに猛省する青年。
30年後。
あの出来事がキッカケで改心した彼はあれから変貌を遂げ、今や一家の大黒柱で、愛する妻と子宝にも恵まれていた。
しかし歴史は繰り返されるのか、彼の息子もひきこもりになっていた。
「やれやれ、今日はどんなものを要求しているのかな・・・」
と、ドアの下の紙を手に取り確認する彼。
妻は心労が積み重なり、脳梗塞で倒れてしまった。
「 ヤクルト買って来い 」と書かれていた。
それを見た彼は大きくため息をついた後・・・、
「あれはクロレラのパクリだぞ!?」