
この年で二回目の14日。とある中学校。
KinKiKids(キンキキッズ)30枚目のニューシングルにして最高傑作の、Family~ひとつになること(作詞:堂本剛)を作曲した堂本光一ばりにイケメンで、成績優秀で、しかもスポーツ万能と三拍子揃った、
正に、ブログ、愛する人への恋文(
http://20yearsafterlove.blog.2nt.com/)作者のような男子中学生、ケンタは女性に囲まれていた。
日本の年中行事故に、チョコを大量に貰っているのだ。
他の男子生徒達からは、羨望と嫉妬の眼差しを向けられている。
その様子はさながら、愛する人への恋文(
http://20yearsafterlove.blog.2nt.com/)の読者が、世界一面白凄いブログを、見てないフリ、楽しんで無いフリをしている光景に類似する。
いや、それそのものだ。
国民的女性アイドルグループ、AKB48(エーケービーフォーティエイト)の人数ばりにチョコを貰うケンタ。
つまり何個なのかは誰にもわからないが、とにかく沢山だ。
「やれやれ。まいったなー・・・」
放課後、公園のベンチで一人ニヤけるケンタ。
するとそこに、今にも餓死しそうな、ベトナムとカンボジアの子供がやって来た。

「ギブミー! チョコっ!! ギブミーっ! チョコっ!!」
と、虚ろな瞳で必死に求めてくる子供達。
「なっ、なんだお前等・・・? あっち行けよ!!」と振り解くケンタ。
その反動で、ケンタのカバンの中からは、食べ残したパンと牛乳が零れ落ちてしまった。
土が付いてる事なんて気にもせず、地面に口をつけ、貪るようにそれを喉に入れている子供達。
「なっ、なんだこいつ等・・・」慌ててその場を立ち去るケンタ。
勢いあまって、近くの店に入ってしまった。
そこは、この時間はケーキ食べ放題をしている店だった。
「いらっしゃいませ。三名様ですか?」慣れた様子で尋ねて来る小奇麗な店員。
「三名・・・?」怪訝として後ろを振り向くケンタ。
「ギブミー! チョコっ!! ギブミーっ! チョコっ!!」
さっきの薄汚いガキどもだった。
「ひいぃぃぃ・・・」と驚くケンタだったが、
「ギブミー! チョコっ!! ギブミーっ! チョコっ!!」
その必死な眼差しに心を打たれるケンタ。
たかがチョコを、ここまで欲しがるなんて・・・。
毎年この時期には大量出現する、「バレンタインなんて興味無い、チョコなんていらない」と気取っているが、過剰に興味持ってるし、チョコを欲しがりまくってる男達とは明らかに違う。
この子供達は、心の底から真摯にチョコを欲しがっているのだ。
「お客様、申し訳ありません・・・。薄汚い客はちょっと・・・、」
見下すようにベトナムとカンボジアの子供に視線を向ける店員。
他の客達も、冷笑しながら軽蔑の眼差しを向けている。
日本人の本性が現れてしまった。
「ぎぶみ・・・ちょこ・・・。ぎぶみ・・・ちょ・・・」
子供達は死んだ。
葬儀屋が嗅ぎ付けたが、「ちっ、金にならないなこりゃ」と思わず本音をつぶやいた。
「うわぁあああ!! ふざけるなお前等あぁぁぁ!!!」
と怒り狂い、叫ぶケンタ。
だが・・・、
「はっ、夢か!?」
男子中学生、ケンタが見た夢だった。
しかし・・・、
「いや。夢じゃない。世界には確かに、チョコレートも満足に食べられない子供たちがいるんだ!
今も、飢餓に苦しむ子供達はいるんだ・・・。現実だっ・・・」と悟るケンタだった。
そして学校。
不細工で、成績不振で、スポーツ音痴のケンタとは対照的に、イケメンで、成績優秀で、
しかもスポーツ万能と三拍子揃った人気者の男子中学生はチヤホヤされ、チョコを大量に貰っていた。
そういえば今日は「あの日」だったと思い出すケンタ。
「てめえら、ふざけんなよ! 今も世の中には、チョコの一切れも満足に食べられずに、餓死する子供達がいるんだぞ!! チョコレート会社が作った商業的なくだらない陰謀で騒いでるんじゃねえよ!!」
と、心の中で叫ぶケンタであった。
この年の2月14日・・・、
ケンタが貰った本命チョコの数:0個
ケンタが貰った義理チョコの数:0個
ケンタが家族から貰ったチョコの数:1個(母親)