2011年、春。
アーティスト、堂本剛は色んな意味で色んな方面に辟易していた。
『東北地方太平洋沖地震』の影響により、韓国の最強女性歌手グループKARAと、
日本の最強女性アイドルグループAKB48の派生ユニットSDN48の最新シングルCDの発売が延期してしまい、
堂本剛の最新シングルCD『縁を結いて(えにをゆいて)』の発売日、4月6日と同日になってしまったのだ・・・。
今までに堂本剛の名義で出して来た三枚のシングルCDは、どれも売り上げ一位を獲得し、
当然今回も一位獲得が前提だった。
それがエリート組織である、株式会社ジャニーズ事務所の総意だった。
堂本剛に「4月に出したいですね」と言わせて強引な理由を『作らせて』まで、
強敵と対決を避けたというのに、免れなかった・・・。
自信が無い事務所の計画が地震の影響で潰されるとは、なんと皮肉なのだろうか。
『強敵』と発売日をずらす作戦。
ジャニーズの七不思議、堂本剛が所属するグループ「キンキキッズのCDは毎回一位」は、
情けない事にそうやって「意図的に強敵と避けている」からこそ出せる結果なのだ。
もちろんそれは企業としては当然の戦略であるし、責められる謂れは無い事なのだが。
しかし本人は堂々と勝負したいと常日頃から思っていたので、腑に落ちないでいた。
自分の実力が、Mr.Children(桜井和寿)やB'z(稲葉浩志、松本孝弘)には遥かに及ばない・・・。
そんな事はアンチでもナンシー関でも無く、彼自身が一番わかっている事なのだ。
他の同日発売者は、全盛期が終わっているので脅威では無いモーニング娘。
実力派だが売り上げ的には脅威では無い、鬼束ちひろ、UVERworld、JUJU、DEEN、YUKI等が連ねられていた。
やはり脅威なのはKARAとSDN48だ。
何が脅威なのかというと、金だけは持ってて脳にはミソでは無くクソが詰まっているファンが、
一人で何枚も何十枚も何百枚もCDを購入し、売り上げに貢献するのが脅威なのだ。
もっとも堂本剛サイドも、今回の『縁を結いて(えにをゆいて)』では通常盤と一緒に『何故か』初回限定盤AとBを出し、『何故か』2枚購入しないと応募出来ないキャンペーンを展開するクソゴミカスダニ鬼畜、
音楽を冒涜商法をしているので、お互い様ではあるのだが・・・。
しかしそれはあくまでも『事務所の意向』であり、堂本剛本人の意向では無いのだ。
自由に音楽をさせて貰えるのと引き換えなのが、皮肉な事にもファンを騙して金を巻き上げるその商法なのだ・・・。
堂本剛は苦しんでいた。
ジャニーズを辞めて成功している前例も数多く存在するのに「なんで才能の塊の堂本剛はジャニーズ辞めないんだ」という疑問を抱いている者は、業界内外にかなり存在する。
本人も何度か「ジャニーズを辞めよう」と本気で思っていたのだが、辞められない理由があったのだ。
それは、ジャニー喜多川社長が、堂本剛の姉と母を人質にしているからなのだ!!
「ユー。ジャニーズ辞めたいなら辞めてもいいヨ? 君の母上と姉上が、刺身にされたいならネ!」と。
愛する母と姉が刺身にされて、天河神社に飾られてお参りに来た誰かのお母さんが「綺麗やな・・・」と一筋の涙を零す事を危惧しているのだ。
だから堂本剛は歌うのだ。だから堂本剛は、ジャニーズ所属のアイドルとして歌うのだ・・・。
だから堂本剛の歌は悲しいのだ。だから堂本剛の歌は愛なのだ。だから堂本剛の歌は空なのだ。
そして、4月6日が訪れた・・・。昼。
堂本剛は事務所の指示で『笑っていいとも!』にCDの宣伝をしに来ていた。
何しろ強敵達とぶつかる事になってしまったので予定外の事を急遽展開し、必死だ。
水川あさみからの友達紹介が堂本剛なのだが、実は『友達紹介』では無く事務所同士で話し合って、
『何か宣伝したい事がある人を紹介』だ。
こんなのは誰でも知っていることではあるのだが・・・。
見事に茶番劇を終え、『ユースケ・サンタマリア』が何か宣伝したい事があるらしいので、
事務所から事前に入念に決められてる台本通りにユースケを紹介する堂本剛。
それから暫く時間経過し、自宅待機している堂本剛の元に、
初日オリコンデイリーシングルチャートの結果が届く。
~2011年4月6日発売シングルCD売り上げ(昼過ぎ時点)~
1位・・・曲名:ジェットコースターラブ 歌手:KARA 売り上げ:35000枚
2位・・・曲名:愛、チュセヨ 歌手:SDN48 売り上げ:30000枚
3位・・・曲名:縁(えに)を結(ゆ)いて 歌手:堂本剛 売り上げ:20000枚
らしい。負けている。かなり負けている。忍者はマキビシを、撒いている。少女は花の種を蒔いている。
もちろんこれは週間ランキングでは無いので数日経過しないと最終結果はまだわからないし、
本来一番重要視されるべき要素、この売り上げ枚数の中で『何枚のCDが大事にされるのか』も不明である。
「ふうっ・・・」
愛妻の堂本光一の「路上歌手じゃ無いんだから売れないCDなんて必要ない」って主張も、
もちろん頭で理解は出来る。
しかし堂本剛は『心』では理解出来なかった。
今だに自分の所に届くファンレターやラジオへのメールでは、
2002年発売の『街』や2006年発売の『これだけの日を跨いで来たのだから』で救われた、感動したという便りが来る。
彼にはそれが嬉しくて仕方なかったのだ。散々ドラマ主演を勤めた彼は、世の中数字が全てなんてことは頭ではわかっている。
しかしCDの売り上げには『歌で救われた者の数』は現れない。
彼は、歌で救いたいのだ。人を、日本を、空を、愛を、涙を、魂を、心を、虫を、田中を、人間を、世界を、国を、日本を。
1000000枚売り上げても、1人も救えない歌なんて作りたくないのだ。
彼は『悲しみのどん底を生きてる人を本気で救いたい』のだ。
自分が歌で救われたように、誰かを歌で救いたいのだ。
しかし彼はわかっている。あくまでもそれは「救ってくれた歌への恩返し」である事を。
その為に歌い続けているのだ。
10枚しか売り上げられなくても、1人救えるならそれでいいのだ。それが堂本剛なのだ。それが愛なのだ。
無論それは事務所に籍を置いている『商業歌手』としては失格だし、彼も承知している事なのだが・・・。
気晴らしに、CDショップへ向かう堂本剛。
小中学生ぐらいの少年が、新譜コーナーの『縁を結いて(えにをゆいて)』のジャケットの前で悩んでいた。
すると、母親だと思われる女性が物凄い剣幕でCDショップに入店し、少年に駆け寄る。
ペチペチペチ!プーチン!!ペチン!!!ペチンっ!!!!
「なっ!?」唖然とする堂本剛。
「あんた、なんで私の財布からお金を勝手に盗ったのよ!?」と詰め寄る母親。
「ごめん・・・。堂本剛さんの新曲CDが欲しかったから・・・」萎縮しながらそう告げる少年。
「お小遣いじゃムリだったの!?」
「通常盤は1000円だから買えるけど、初回盤は1400円だから・・・。そっちも欲しかったから」
「!?」それを見て、驚愕する堂本剛。
「これが・・・。これが真(現)実なのか・・・」と。そして少年に近付く堂本剛。
「えっ!? つ、つっ、剛さん!?」もちろん、ハトがアサルトライフル食らったように驚く少年。
「よっ!!」ドサクサに紛れて草なぎ剛(SMAP)、森田剛(V6)が現れた。
「剛さんっ!?」子供は更に驚いた。お呼びじゃ無いので、草なぎ剛と森田剛は帰った。
「『音楽』って、『音楽』って『音を楽しむ』って意味なのに・・・、」
涙ぐむ堂本剛。
「?」心配そうに見つめている少年。
子供を強く抱きしめる堂本剛。
「どうして、どうして『音競』になってしまったんかな・・・。ごめんな・・・。『音の売り上げ』を競うなんて、しょうもない事や!」と泣き叫ぶ堂本剛。
「剛さん・・・」
「僕が生きてるこの日本は不思議を隠して呼吸してる・・・。でもそれに気付かぬフリして生きてるんだ・・・。ってCDショップの少年に大人のフリ。この少年の人生に、不思議が沢山咲いていますように・・・」
店内にいる客達は「ぐすん・・・」と感涙していた。
その一部始終をコッソリを見ていたのは、堂本剛の愛妻の堂本光一(KinKiKids)と長瀬智也(TOKIO)だった。
「・・・」
「光一」沈黙を断ち切るかのように、長瀬智也が話しかける。
「ん?」
「俺達はただCDをはい録音、はい発売、はい売れました、はい凄いですね嬉しいですね、はいお給料どうぞって流れ作業をしてるけどさ・・・」淡々と口を動かす長瀬智也。
「ああ」静かに相槌を打つ堂本光一。
「いつから、音を楽しめなくなったんだろうな・・・。『買っただけで満足する自称ファン』の人達が、どれだけ俺達のCDを・・・、」
「やめろ!!」その続きを察し、慌てて遮る堂本光一。
●主題歌:縁を結いて(えにをゆいて) 作詞、作曲、編曲、唄(うた):堂本剛
「 愛に歌詞なんて無いよ だって愛だもん
空に歌詞なんて無いよ だって青だもん
君に歌詞なんて無いよ だって美だもん
僕に歌詞なんて無いよ だって魂だもん
嘘になるから 歌詞があったら嘘になるから
縁を結う必要なんて無いよ 縁を結わない必要なんて無いよ
どっちでしょう? 決められないよね…
だって 人が決めた事を追う事でしか決められないのだから
嘘です それは嘘でしょ 嘘だと言ってください 残念ながら本当です…
NIPPON(ニッポン)が終わったなんて 嘘じゃないから 嘘って事にした目背けたらダメだからなぁ
NIPPON(ニッポン)は終わりました 人間(ひと)は1人もいません
→を見ても ←を見ても きかい機械機械機械機械キカイだらけで 心はありません 見当たりません
はい 本当です はい 本当です
何を結えと こんな状況に 縁を結えと?
お断りだ 結えるはずが無い…
縁は結えない もう縁は結えない…
縁を結えるNIPPON(ニッポン)に戻すには 1300年はかかるなぁ…
やってみるか もう一度見つめる愛で 縁 を 結 」
ジャスラック社員「・・・」
堂本剛「なんですか?」
ジャスラック社員「残念ですが、自分の歌でも許可は必要なんです。逮捕します」
堂本剛「今降りてきた歌を歌ってるんですよ・・・」
ジャスラック社員「は?」
堂本光一&長瀬智也「音を楽しんでるんだよ! 邪魔するんじゃねええぇぇぇ!!」
堂本剛「お前等!?」
中居正広「やれやれ・・・。困った奴等だべ」
木村拓哉「ちょ、待てよ」
中居正広「ん? ちょ、待つべ」
木村拓哉「本当に困った奴なのは、今の音楽システムに疑問持ってる剛じゃないだろ・・・?」
中居正広「木村・・・」
【 SMAPと田中から、堂本剛への手紙 】
剛・・・。お前は本当に造られたキャラ性じゃなくて繊細な奴だから、
魑魅魍魎とした芸能界で生きていくうちに、いつかどうしようもない悩みに陥る時があると思う。
そういう時は俺達より、光一に相談しろ。
スマップは7人だけど、キンキは2人なんだから、右にも左にも1人しかいないだろ?
相棒は1人しかいないんだ。いいか?その相棒を常に信じろ。
キンキはスマップより、もっともっとほっともっと、上を目指せ。
2人の先輩、田中、中居正広、木村拓哉、草なぎ剛、森且行、稲垣吾郎、香取慎吾、田中 より