とあるアパートに暮らす新妻は喜んでいた。
「あなた!」
波野タイ子が、夫の波野ノリスケに嬉しそうに声をかける。
「どうしたんだい?」
「イクラが、拳法を覚えたのよ」
「なんだって!?」
この前2歳になった1人息子の波野イクラが、やっと拳法を習得したのだ。少し遅いぐらいだ。
「今日は記念日じゃないか!」と声を上げるノリスケ。
「ハーイハーイちゃーん!!」と、ノリスケをポカポカ叩くイクラ。
「ははは。強い、強いなイクラ」
「イクラは将来は、立派な拳法使いになってくれるわよ!!」
拳法記念日。
その日の夜、隣宅に住む家族が暴漢に皆殺しにされた。
「俺が・・・。俺がもっと拳法の腕が優れてれば、守れたのに・・・!!」
イクラはショックで修行の旅に出た。
4歳になる時、自殺した。