
天皇誕生日の前日の放課後。とある小学校。
「天皇、ありがと! お前のおかげで明日は祝日だよ!!」
天皇誕生日に生まれた、将来の夢は『科学者』という平凡な少年明人は、
毎年この時期になると同級生たちから「天皇」と茶化されていた。
「くそ、父さんと母さんはなんで僕をこの日に生んだんだよ・・・」
ちなみに、明人の父さんが勤めてる会社は先日、倒産した。
明人が給食の残りの揚げパンを食べながら公園のベンチで黄昏ていると、
「やあ、僕ひろし。ひろしです」と爽やか好青年が声をかけて来る。
「あっ、どうも」
「何か悩んでいるようだね? 僕でよかったら聞くよ。話せば楽になるかもよ?」
「はい・・・実は、」一瞬戸惑ったが、何処か愛嬌のあるその青年には包み隠さず話す気になれた。
「そうなんだね。でも僕なんて、2月14日に生まれたんだよ」
「えっ? それじゃあ・・・、」何かを期待する明人。
「だから、バレンタインに女の子から『こっ、これはただの誕生日プレゼントなんだからね! 勘違いしないでね!?』とか言われるよ」自嘲気味にそう発言する、ひろし。
「自慢じゃねえか!」
と怒り、立ち去る明人。
数分後、明人は歩道橋の上でもの思いにふけっていた。
「君、どうしたの?」ミスター味っ子こと味吉陽一みたい声で、優しそうなお姉さんが声をかけてくれる。
「はい、実は・・・」はんばヤケクソ気味に悩みを打ち明ける明人。
「そうなんだ。お姉さんは5月5日、こどもの日に生まれたのよ?」
「えっ?」
「でも5月5日は毎年アニメの収録してて、鯉幟どころじゃないのよ・・・?」
「コナンじゃねえか!!」と叫び、走り去る明人。
お姉さんの正体は有名声優、高山南だった。
次の黄昏地へ向かう最中、
「繋ぎ合わせた今は、1人だけのものじゃない。この景色は数々の犠牲を越えた希望の海・・・。
愛も、求めるものじゃいけない、波へとそっと・・・捧げて行くものなんだあー」
と、KinKiKids(キンキキッズ)が歌う名曲、Family~ひとつになること(作詞:堂本剛。作曲:堂本光一)を歌っていた山下智久似の青年と一緒にいた、田中とぶつかってしまった。
「あっ、すいません」素直に謝る明人。
「いえ、こちらこそ」
それから数分後、明人は火山を見ながら何故自分は天皇誕生日に生まれてしまったんだろうと本気で悩んでいた。
陽気なアメリカ人、名札から察するにカミュー・ケイドという少年が声をかけてくる。
「ヤア」
「あっ、どうも」
素直に挨拶を返す明人。
それにしても明人はかなり親しみのある、話しかけられやすい風貌をしているのだろう。
尤も彼の場合、悩んでる少年に声をかけたのは恩師、坂本金八の影響かも知れないが。
「ドウシタインダイ? 悩ミガアルナライイナヨ?」
と、拳銃を突きつけながら聞いて来るカミュー・ケイド。
「はっ、はい! 実は・・・、」慌てて悩みを打ち明ける明人。
「そうなんだ。僕なんて7月7日生まれなんだよ?」
カタコトには飽きたらしい。普通に喋れたのだ。
「えっ? じゃあ・・・、」
「だから毎年誕生日には、願い事を書いた短冊を葉竹に飾ってるよ」
したり顔でそう述べるカミュー・ケイド。現、カミュー・ケイド。
「意味わかんねえ!!」と叫び走り出した明人が辿り着いた先は、富士の樹海だった。
すると、何やら映画撮影をしているようだった。
「ん? 坊主、どうした? こんな所に来て」
明人の存在に気付いた、監督らしき威圧感、存在感のある者が気さくに声をかけてくれる。
「今村昌平監督・・・何やってるんですか? 押してますよ」
とスタッフが慌てているが、「うるせえ!」と一蹴する。信用出来そうな人だなと感じ取る明人。
「実は・・・」と、悩み事を発露する明人。
「そうなのか。俺なんて、9月15日生まれだぜ?」
「えっ、敬老の日・・・・?」
「でもな、まだまだ現役でいたいから老人として扱われたくない。若者から敬われたくない」
「パワフルじゃねえか!!」
と、盗んだ撮影用のバイクで走り出す明人。
すると、豆腐のカドにぶつかって転倒してしまった。
「うぎゃああああ!! いてえぇぇえぇぇぇぇぇぇ!!!!」
とのたうちまわっていると、偶然通りかかった銀髪のヤンキーっぽい若者が、
「大丈夫か坊主?」と的確な応急処置をしてくれた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「なーに、なんとかの時はお互い様って言うだろ? 坊主、何があったんだ? 言ってみろ」
「でも・・・」相手が相手だけに躊躇する明人。
「俺はカラーギャングのヘッド、銀狼だぜ? 口とチンポは堅い。他言は絶対にしないから安心しろ」
「うん・・・」この人もまた信用に値する人だと判断し、打ち明ける明人。
「そうか。俺は、11月23日生まれなんだけどな・・・、」
「勤労感謝の日!?」
「ああ。何故、敵対グループヘッドの、金狼が感謝される日なんだ? 納得いかねえ!」
「ただのバカじゃねえか!!!」
とツッコミ、早々とこの場を立ち去る明人。
「くそ、どいつもコイツもバカにしやがって・・・。こうなったらヤケだ、天皇になってやる!」
と、悔しさをバネに一大決心をする明人。
それから数十年後。
明人は、見事天皇に即位していた。
今は各分野で名を馳せているあの時の同級生達は毎年この時期になると、
「明人、おめでと!!」と祝辞している。