とある中学校の放課後。
「あ、雨だ……。どうしよ、傘、忘れちゃった」
剣道部に所属する中学二年の少女は困っていた。
(ケイ子たち、もう帰っちゃったんだ……。どうしよっかな、濡れてもいっか……)
その時だった。
「んっお前二年の。まだ帰ってなかったのか?」
なんと、憧れの先輩が声をかけて来たのだ。キャー(*ノェノ)キャー
「あ、はっ、はい……。今から帰ります」
緊張した様子で答える少女。
「傘、無いのか? 入って行くか?」
「……!?」
近寄り難くて怖い先輩だと思ってた彼からの意外な一言に戸惑う彼女。
「は、はい……。ではお言葉に甘えて……、」
ピトっ。ピトっ。(*ノェノ)キャー(*ノェノ)キャー(*ノェノ)キャー。
「おい、あんまり引っ付くなよ」
その時だった!!
「ようっ!! 今日こそ命貰うぜ!! 50勝49敗だよなぁっ!?」
先輩のライバルの『剣士』が現れてしまった。
「すまん、無理なようだ」
少女を後ろに引っ張るのと同時に、そう言う彼。
「とうっ!!」
「たあっ!!」
『傘』を剣代わりに、熾烈なチャンバラが始まった。
「先輩……」
戸惑い、そして悲しむ彼女。
彼女の目からは『雨』が流れる。
「!?」
それを見て驚くライバルの剣士。
「ちっ、女の涙とか、シラけたぜ」
と言いながら、剣を仕舞うライバル剣士。
「キンタロー!?」
戸惑いながら真意を尋ねる桃太郎。
「桃太郎。お前がその子の傘になってやるんだな。今日のところは見逃しといてやる」
と言い残し、立ち去るキンタロー。
「おい。大丈夫か、恵津子?」
と少女に近づく桃太郎。
「ばかばか!! 先輩のバカ……。心配したんだから……!!」
ポカポカポカポカポカポカ(●`・ω・)ノ=O)`-д゚)
「ごめん……」
と謝り、優しく抱きしめる彼。
どうやら雨は止み、彼等の心の闇も晴れそうだ。
何故なら二人はもう、独りじゃないのだから。
ずっと雨模様の人生だったが今は『傘』があるのだから……。
それを物陰からコッソリ見ていたのは、キンタローだった。
「やれやれ……」
すると、四天王の三番手、四番手が声をかけて来る。
ちなみにキンタローは、四天王の中で二番目の実力だ。
「よう。お前との戦いで瀕死になってる桃太郎なら、俺等でも倒せるよな」
「アイツ等の邪魔をするのは、俺が許さんぞ!!」
「へっ……、」
「そうかいっ!!!!」
数分後。
「うう……桃太郎……」
瀕死のキンタローがやって来る。
「キンタロー!? お前ほどの奴が、誰にやられたんだ……!?」
「しっ、四天王……」バタっ。
「キンタろおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!???」
病院。
「全治半年とカップヌードルを作る時間……と言った所でしょうか」
医者が神妙な面立ちでそう告げる。
「……」
桃太郎が外に出ると、また大雨が降っていた。
「先輩! 私も行きます……」
「ごめん」ドスっ!!
「えっ……」バタっ。
不意を突き、恵津子を気絶させる桃太郎。
ざああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
「恵津子……。太陽のようなお前に、雨のような俺はやはり似合わなかった」
四天王のアジトへと猛ダッシュする、桃太郎。
「てめえらあぁぁぁぁ!!!」
「コイツの命がどうなってもいいのかな?」
四天王の三番手と四番手は、恵津子の親友のケイ子を突き出す。
「卑怯者どもめ!!」
「お前が言うべき台詞は、そうでは無いだろ?」
「……」
しばしの沈黙の後剣を投げ捨てる、桃太郎。
「お利口さんにはご褒美が必要だなあぁぁ!!」二人で桃太郎を袋叩きにする。
「お前等……。私の留守中に何をやっている!?」
「ぼっ、ボス!?」四天王の二人が震え上がる。
どうやら、四天王の一番手が現れたらしい。
だが、倒れながらその姿を上目で見た桃太郎は、驚愕する。
「恵津……子……?」
なんと四天王のボスは、愛しの恵津子だったのだ!!!!
「先輩……。騙してて、ごめんなさい……」
自らマグマに転落する恵津子。
「恵津子おぉぉぉぉぉぉ……!!!!!!!!」
「爆発装置が押された! この建物は崩れる!! 早く俺達も避難するぞっ!!」
と促す、四天王の三番手と四番手だが……、桃太郎は……桃太郎は……。
慌ててケイ子を連れて外に出る、四天王の三番手と四番手。
外は晴れていた。
だが、三人の目は雨模様だった。